「━━━━━で、結局十拳剣はどうなったがや?」 「大まかな形は出来たから、あとは鉄工やすりで磨いて細かい形を造れば完成するわ。  …大丈夫、こっちの作業はそんなに時間かからないし、体力も消耗しにくいかわ。」 「………。」 …歩目(あゆめ)の茶店にて休憩をとったその後のこと。 ボレーラが作ってくれたご飯を食べてから、 エアリーは夜魔(よま)とボレーラを連れて、 今度は自分が大聖(だいせん)に代わって歩目に会いに行こうと、神社の裏手に回った。 大蛇の同行や止める行動に出るのは大聖に任せ、しかし歩目と話した後、 十拳剣(とつかつつるぎ)を造ってから大聖と合流しようという計画だ。 エアリーと大聖が宮守(りもや)と井守(いもり)の隠れ家を出発してから、 この倭国…出雲のやってきてから、もう半日ぐらいは経っている。 陽が暮れ始め、辺りは暗くなって夜へつ変わろうとしていた。 しかし、夜になるということは、夜行性である夜魔が活動を始めるということだ。 休憩を取り、更に夜になった。これらで夜魔は元気を取り戻していた。 ボレーラが十拳剣の現状を問うと、エアリーが真剣な表情でコクリと頷いた。 今は別行動を取っている大聖が、実際どれだけの実力を持つのかはわからない。 とはいえ、戦闘に関して知識があるのは今いる者達の中では…大聖だけだ。 今も暴れているであろう大蛇を止められるとすれば、その役目は…大聖にしか担えない。 なので、エアリーは夜魔やボレーラと共に、 大聖が出来なかった歩目を連れ出すということを選んだのだ。 神社の裏に回り、大聖が話していた地下洞窟への入り口を開け、中に入っていく。 外も夜に近づいてきているのだ。洞窟内は更に暗くなっているようにも感じた。 「…夜魔、照明お願い。」 「………。」 戦闘の知識がある大聖だからこそ、そこまで怖気付くことなく中に入れたのだろう。 それに対し、自分はあくまで戦闘の助けとなる物を造る側。戦うということは出来ない。 …そのため、もし自分の身に何かあった場合は、逃げるしかないのだ。 地下洞窟への入り口をあけ、少し震えながらも内部えと足を一歩踏み入れる。 中は、とてつもなく暗い。…そこで、発光体を持つ夜魔に灯りを付けるよう頼んだ。 ボレーラが本来、元気になった夜魔にしてほしかったことだ。 エアリーにそう言われた夜魔は、エアリーの頭上へと飛んでいく。 太ももの発光体を点灯させ、洞窟内を照らした。 「んみゃ!これで中に進めるがや!」 「そうね。歩目がまだ無事だといいけど…。」 ボレーラがこのときを待っていたという嬉しそうな顔で言えば、 エアリーは唾を飲み込んで…、コクリと頷いた。 発光体を持つ夜魔を先頭に、3人は暗い地下洞窟へと進んでいった━━━━━。 『こうしょう』 ━━━━━ここに閉じ込められてから、もうどれくらい経っただろう。 幸い、自分の身体に身についている植物の特徴によって生命を保っていられる。 …が、それもいつまでも可能というわけではない。 地下洞窟に流れる水を栄養源に、歩目はなんとか耐えているという状態だった。 大聖と初めて話したときに比べ、…根が腐るのと同じ原理なのだろう、 美しかった身体や髪は枯れ始め、本体であるかんざしの花の花弁は散り始めていた。 「(………このまま誰も助けてくれなかったら、死んでしまうじゃろうな。)」 植物の命が短いように、植物人の命も短い。 いや…、命が短いだけに留まらず、生物、環境、物質とありとあらゆる物の殆どが苦手だ。 植物にとって必要不可欠である日光も、栄養源となる水も、 取り過ぎた場合は自らの身体を滅ぼすことにもなる。 沢山の種族の中でも最も弱く、儚い存在である植物。 そんな植物だからこそ、生きている間だけでも立派な姿を保とうと、歩目はしていた。 産まれて死ぬまでの間、花を咲かせる美しい植物として、強くたくましく生きようと決めた。 短い生涯だからこそ、目に、脳に、焼きつける程に、強く、逞しく、そして美しく生きる。 そのためには…、どんなときでも自信を持ち、自らの信念を貫く。それが歩目だ。 …枯れ果てた植物はお世辞でも美しいとは言えない。 自分の美意識を優先させるなら、今の自分の姿は誰にも見られたくない。 しかし、その美意識により誰かを拒むとすれば、自分の死に繋がる。 今の枯れ果てた自分の姿には自信が持てないだけではなく、 こんな姿になってしまったのかという、他の者達との劣等感も生まれる。 「………。」 とはいっても、水だけでは植物の部分は満たされても人の部分は満たされまい。 歩目に、限界が気始めていた。 閉じ込められてから、ろくに食事を取っていなかったためか、視界がぼやける。 歩目は、なるべく残るわずかな体力を消耗させないようにと、仰向けになって寝る体勢になる。 そうした後に、一歩、また一歩と近づいてくる死に対して、 せめてそれに怯えることなく強く受け止めようとする姿勢はつくろうと、 目を閉じて己の精神を落ち着かせる。 「(………?)」 目を閉じて眠るような体勢に入ってから、ほんの少し後のこと。 ふと目をあけて、首だけを別方向に向けてみると、 洞窟の入り口へ向かう道が…明るく照らされているのがわかった。 その光は、昼間に自分が出会った大聖が持っていた物とは、異なるもの。 ………誰かが、来る。 死と隣合わせの状況からすれば、とても喜ばしいことであった。 今の自分の醜い姿を見られると思えば、それは歩目にとって屈辱的なことであった。 「(美しくいなければ、生きていたってなんの意味もない。   無様な姿で生き続けるくらいなら、いっそのこと死んだ方がマシじゃ。)」 ━━━━━何を言っておる。助かる可能性があるのなら、 自らの美などより自分の命を優先させるべきじゃろう━━━━━!? 美意識と命の危険、この2つが自分の心の中で葛藤を起こしていた。 そんな歩目に心情に関わらず、光はこちらに近づいてくる。 それに目を見開き、驚いたように口を開け…その光が自分に近づくのを待つ。 『………カツン………。』 今度は、誰かの足音が聞こえてきた。 だが、それに対して助けを呼べる程の力は…もう、残っていなかった。 助かるか、それとも死ぬか。 歩目がその2つを自分の前に現れた者達に委ねたそのときのこと。 「━━━━━歩目っ!!!?………歩目っ!!!!!」 聞き覚えのある声が、自分の名前を呼び続けた━━━━━。 ………。 「━━━━━っ………?」 ━━━━━あれから自分の身に何が起こったのかわからない。 一瞬、自分は死んで天国にでも行ってしまったのだろうか、とも思ったが、 起き上がった際に見た回りの景色と自分の容態に、そうではないことを悟る。 むくりと身体を起こせば、自分のかんざしに手をやってみる。 …かんざしの花は、元気を取り戻したのか綺麗に咲いていた。 その変化に驚きを隠せず、歩目は今寝かされている場所をキョロキョロと見回していると…。 「………おぉっ!!あ、歩目っ!!!歩目が起きたがやっ!!!!」 「………!!!」 寝かされていた部屋の入り口から、自分が最もよく知っている姿を声が、2つ。 その2人…ボレーラと夜魔の姿を見て、歩目は物凄く驚いた顔をした。 「歩目っ!!よかったがや…!!生きてたがや…!!!おいら、嬉しくて嬉しくて…。」 「…そなたは、ボレーラ…?それに夜魔…!?」 「………。」 「おおぅ!!そうだがや!!!おいら達だがや!!!  おいら達、大聖に歩目があの神社の裏にある洞窟に閉じ込められたこと聞いて…。」 「大聖…?その者は確か…。」 歩目が…、自分達が共に暮らす歩目が無事に元気を取り戻したことに、 夜魔もボレーラも嬉し泣きをしながら歓喜の声をあげていた。 2人のその様子を見て、歩目は自分は無事であることを改めて実感する。 …よく見ると、枯れ果てた姿だったのが普段の美しい姿に再生している。 なぜ元に戻ったのかを聞く場合でもなく、 歩目は昼間自分の前に現れた獣人の少年のことを聞こうと口を開けば…。 「………その大聖って人は、わたし達の味方よ。」 「…?」 夜魔とボレーラに続き、エアリーが1人遅れて部屋の中に入ってきた。 エアリーが入ってきた…もとい大聖を除いた4人が集まった場所は、 歩目と夜魔、そしてボレーラが暮らしている茶店だった。 にっこりと笑いながらそう言ったエアリーの方に、歩目は困惑した様子で振り向く。 状況や経緯を掴めないという歩目に、エアリーが説明を始める。 「わたしはエアリー。その大聖って人とある目的を持って旅する武器屋の旅人よ。」 「武器屋の旅人…?その旅人が、何の用でここにやってきたのじゃ?」 「そうね…。先にわたしの目的を話しておくと、  わたしは武器屋をやってて、でも一緒に働く仲間がいない状態で経営してたの。  それじゃあ成り立たないって思って、仲間を探すことにしたの。  あとは…私自身が武器に関していろいろ勉強したいってこともあるかな。  大聖は、この旅で一緒に行動する相棒。」 「んみゃ?エアリー…、それさっきおいらや夜魔に話したことがや?」 「えぇ。せっかく仲間を探すなら、ただ待つんじゃなくてわたしから探しにいこうって。  それで旅をしたり鍛冶を習ったりしてたんだけど…。  その中で、この倭国が大蛇で大変なことになってるってことを知ってね…。  大聖が気になるって言ったから、わたしも一緒に来たの。」 「…なら、大聖といったか。あの者が大蛇のことを口にしとったのは…。」 「えぇ。大蛇を止めようとしてるためよ。  あとは…ボレーラと夜魔があなたが閉じ込められたことを教えてくれなかったら、  わたしも大聖もあなたのことに気付かなかったでしょうね。」 「………。」 「大聖があなたに会ったとき、あなたは外に出たがらなかったみたいね。  でも、その理由はわたしからは聞かないことにするわ。」 少し困った様子で笑いながら、エアリーは自分の目的とこれまでの経緯を説明した。 それを聞いた歩目は、顔を俯かせて…複雑そうにしていた。 昼間に話した通り、大聖は大蛇をなんとかしたがっていた。…しかし、その大蛇も…。 いや、そのことはまだ話さないでおこう…。 「…まだよく状況などは掴めてはおらぬところがあるが、  そなたらには…礼と詫びを言わなくてはならんのう。  …エアリーと大聖には迷惑をかけ、夜魔とボレーラには…心配させてしもうた。  ………すまん。そして………礼を言おうぞ。」 「んみゃ!おいらも夜魔も歩目が無事ならそれでいいがや!!  にしても…、本当に無事でよかったがやぁ…。」 「………。」 歩目が少し悲しそうに微笑みながら礼と詫びを言えば、 エアリーも、夜魔も、ボレーラも嬉しそうに…笑った。 …と、皆が笑ったところで、エアリーが切り替えべきだと考えたのか、本題に触れる。 大蛇を退治に向かったという大聖のことや、 夜魔やボレーラには先に話した、自分達と共に働くということ。そして…。 「ところで歩目。………ボレーラと夜魔から話が伺ったわ。  あなたは手足を切り落とされて…、大聖がそれを見たとき凄く取り乱したって…。」 「…!!?…そ、それはっ…!!?」 「なんでそうなったかはわたしにはわからないわ。  でも、それらが切り落とされてなくなっても、命がまだあるんだからいいじゃない。  …自分から死を選ぶより、醜いことはないと思うわ。」 「………っ。」 身体だけを起こしている歩目の前にしゃがみ込み、エアリーは少し悲しそうながらも笑った。 一体、歩目の中にある何が外に出ることを躊躇わせていたのか。 それは、今の段階では話してくれないとしても、 歩目の話を聞いて…、エアリーは歩目に話したいことが出来た。 「美と命、どっちの方が大切なの?…まさか、美だなんて言わないわよね?  命がなくなって死んだら、自分を磨くことさえ出来ないんだから。」 「………。」 「わたしなんて、自分の美に自信持てたこと一度もないわよ。  そりゃあ、わたしは武器屋をしたくて筋力付けたいんだけどさ。  筋力付けたら歩目みたいな女らしいボディラインを失うことになっちゃうことになるでしょ?」 「武器屋!…そうか、それで並の女性より、少し筋肉質に見えたのか…。」 「そうよ。武器を造るもの運ぶもの、筋力がある程度ないと出来ないもの。  力の自信ないのに思いっきり力を使ったら…、肩に力が来ちゃうわ。  これもある意味では、自分の美と引き換えに得たようなものよ。  でも、生きていればそんなわたしのことでも『可愛い』とか言ってくれる人が現れるものよ。」 「…だから、生きてさえすれば美に生死を揺るがすほどこだわる必要はない、と言いたいのか?」 「そうよ。だって、せっかくこうやって生きてるんだから。」 エアリーが笑顔でそう話せば、歩目はわかるようなわからないような、という不思議そうな顔をした。 それでも、エアリーが結局自分に何を言いたいのかはつかめたらしく、 命より美を優先する必要なんでどこにもなかった、と自己完結をさせた。 歩目が小さく頷く仕草でそれを確認したエアリーは、次のことを話す。 「それでね、あなたがあなた自身でその必要がないってことを証明するために、  いつかわたしんとこの店で一緒に働かない?」 「…何?働く!?わらわが!?」 「そうよ。でも強制はしないわ。あなたにはこの茶店があるでしょうし。  あと、一緒に働くならあなただけじゃなく夜魔とボレーラも一緒よ!」 「…?…そなたら、わらわがいない間に勝手に了承したのか?」 「………。」 「違うがや。おいら達は話は聞いても、まだ了解は出してないがや。」 エアリーが笑って誘えば、歩目は驚愕の顔をする。 その後、顔をしかめては自分の同居人である夜魔とボレーラの方を向く。 歩目に疑われた2人は、勝手に了承したと誤解させないように、 夜魔は無言で首を振り、ボレーラは両腕を前方に伸ばして両手を振る。 「おいら達はただ、手足の使えない歩目にもいいと思って話を聞いただけがや!  おいら達3人だけじゃ寂しいから、エアリー達を一緒に過ごせばいいかって考えただけがや!  それに、この茶店じゃ何も出来なくとも、エアリーんとこで一緒に働けば、  歩目にとっても新しい自分が見つかると思って………。  …っこの了解は歩目が決めてほしいがや。おいら達、何も出来ない歩目が気が気でないから………。」 「わらわが………、決めていいのか………?」 「んみゃ。それに………。」 「それに?…一体なんじゃ?」 「━━━━━歩目、毎日なんか元気ない感じがしたから………。」 ………両拳をつくり、それを胸の位置を同じ高さあたりで当てていた。 歩目がよくも悪くも誇り高い人物だと知るだけに、ボレーラはかなり気まずそうに話した。 プライドが高いため、他者の誘いを受けつけにくい歩目。 現に、その面と隣合わせのコンプレックスから、大聖の誘いを拒絶してしまっている。 だが、再度話を聞いたエアリーや、もともと同居人である夜魔やボレーラが言うなら…。 それでも結論が出ず、悩んだ様子の歩目に、エアリーがあることを話す。 そしてそれは、歩目に自分の誘いに対して興味を抱かせることに成功する。 「…実は、最初はわたしも1人でお店やっててさ…。」 「何じゃと?そなたも当初は1人で店を営んでおったのか?」 「うん。1人の方が気ままに働けていいかなぁって。  …でも、1人だけだと手が回らなかったし、それが追い討ちになったのか、  結局は、誰かと一緒に働きたいって考えるようになったの。」 「そのうちが大聖とおいら達、ってことがや。  ちなみに、おいらは食材の調達とか料理が上手いってことで食材管理役で、  夜魔は夜間の監視役とか整理役とかを務めるって話がや。  …おいら達、エアリーと一緒にいるのは悪い気はしないと思うがや。  歩目、おみゃあもどうがや?」 「………悪い気はしない、か………。」 エアリーとボレーラが話し合ったことや見つけ合ったことを話せば、 歩目は、手のない腕の隠れた振袖を口元に当てて…、考えてみる。 この茶店に籠って毎日を過ごしていても、何も変わらないかもしれない。 それなら、突然光のように現れたエアリーや大聖に、一度ついていって見るのもいい。 ………。 暫く考えて、自分の中で結論が出たところで、歩目は顔をあげた。 エアリーへと向けられたその顔は…、僅かに笑っていた。 「…よかろう。そなたらがそこまで言うのなら、わらわも考えてみようぞ。」 「え…?いいの!?」 「うむ。…そこで、わらわに出来ることが何か見つかるというならば…。」 「本当!?やったぁ!!ありがとう歩目!!」 歩目が微笑しながら言うと、エアリーも嬉しそうにした。 そんな歩目の様子と言葉を聞き、夜魔とボレーラも顔を見合わせて笑った。 「じゃあ歩目!夜魔!ボレーラ!よろしくね!!」 「うむ。…じゃが、まだ旅は面子は揃っておらず、店は再開出来ぬのだろう?  再開出来るようになるまでは、暫く3人で待つことにする。…それでよいか?」 「えぇ、そうね!そうしましょう!!」 「んみゃ!!待ち遠しいがや!!」 「………。」 エアリーが嬉しそうな顔で挨拶をすれば、歩目をコクリと頷いた。 やっと出会えた、初めての仲間。初めての共に働いてくれる人。 3人がそれを決意してくれたのが、…エアリーにはすごく嬉しかった。 エアリーが嬉しそうにしていれば、3人も温かそうに…、笑っていた。 1人1人が笑顔で互いに頷き合ったそのとき………。 『━━━━━ドンッ!!!!』 『バキャアアンッ!!!!』 「━━━━━なんじゃっ!!!?何事じゃっ!!!」 突然、木の板が破壊されたような大きな物音が鳴り、天井の屋根の一部が崩れ落ちた。 更には、屋根が崩れ落ちたそこから、何かが…いや、誰かが部屋の中へと降ってきた。 いきなりの出来事に、最初に気付いた歩目が顔と声を強張らせて叫び、 その原因となる人物の方を、キッと睨んだ。 歩目が睨んだその先にいたのは、…エアリーにとっては見覚えのある人物だった。 長くこげ茶色の髪、だがその先端が黄色く染まっている…独特の色合いをした人物。 その蛙の人物は………。 「………あ、あなたっ…!あなた、井守っ!!!?」 「んみゃ?知り合いだがや?」 「………ってぇっ………。」 井守(いもり)と思われた髪と服飾が見えた直後、愕然としながらもエアリーは井守に駆け寄った。 穴の開いた天井から落ちてきた井守の両肩を掴み、エアリーが心配そうに問いかける。 「ちょっ…、ちょっと!?どうしたの井守!!なんでこんなところに!!?」 「…あ、あぁ…。あんた、…あんた、エアリー…、だよな…?」 「そうよ!!井守、一体どうしたの!?何かあったの!!?」 「いってぇ…、けど、あんたを探してたんだ、エアリー…。」 エアリーが心配そうに叫びながら近寄ると、井守も呼吸を荒くして返事をする。 それで、そのままの状態でゆっくりと立ち上がる。 …その際、強く尻もちをついてしまったのか、井守は自分の尻を痛そうに擦っていた。 だが、すぐにこんなことをしている場合ではないと、、エアリーズボンにしがみつく。 エアリーは、そんな井守を上から見る。…井守は、目に涙を浮かべていた。 そして、助けを求めるようにエアリーに叫ぶ。 「エアリー!!大変だ!!!大変なんだよ!!!」 「大変って…。井守、一体どうしたの…??」 「宮守が…!宮守が………!!!  宮守が………、大聖に殺されっちまう………━━━━━!!!!!」 ━━━━━その2人の名前が出たことに、エアリーの頭の中は真っ白になった。 また、宮守…この名前に反応を示したのはエアリーだけではない…。 宮守という名前は………、歩目にも心当たりがあった………━━━━━。 『C-07 しょうとつ』に続く。